本記事は『【Loohcsアカデミー第4回】倫理学① ー倫理学は何を扱う学問なのか』をもとに制作されています。そちらもご覧ください。
倫理学は倫理や道徳の関する問題について「論理的に」考える学問です。倫理や道徳は一般的には正しいことや善いこと、人としてあるべき姿のことを示します。正しさや善いことは人それぞれのように思えますが、それらは論理的かつ理論的に考察できるのです。
倫理学は三つに分かれる
倫理学には大まかに三つの分野があります。どうすべきかやどうあるべきかを考える規範倫理学、具体的な事例における倫理的判断について考える応用倫理学、規範倫理学や応用倫理学の前提それ自体を考えるメタ倫理学があります。いずれにせよ倫理学は「どう生きるのがいいのか」「どのような判断をするのがいいのか」などの「善」や「正義」について考える学問であるということができます。そして学問である以上、倫理に関する事柄(善や正義など)を合理的に考えるのです。
倫理/道徳
倫理とはギリシア語でエートスといい、エチケットの語源でもあります。もともとは習慣という意味がありました。善い生き方とは善い習慣をもつことだったのです。そして善い生き方をすることが人として尊敬されることの条件として古来より追求されてきました。道徳はモラルの訳語であり、モラルはラテン語に由来します。道徳も習慣という意味をもちます。倫理を生き方について、道徳を社会的慣習についてという意味で分けて使うこともあります。
善
善は英語では端的にgoodのことです。FacebookやTwitterの「いいね」もgoodです。では善いこととは何でしょうか。期待外れになるかもしれませんが「善いこと」は「善いことだ」としか考えられないと古来より考えられてきました。確かに何が善いのか判断することはなかなか難しいものです。そうであるがゆえに何が善なのか、善はどこにあるのか、何をすることがいいことなのかは古来より多くの議論が行われてきたのです。
正義
正義は基本的には公平性(justice)のことだと考えられてきました。例えば、ある学校に新入生のAさんとBさんがいたとして、どちらも能力的にはほとんど変わりません。Aさんが何の理由もなく先生から贔屓されていたとしたらBさんは不満に思うはずです。このような感覚が正義の感覚だといえます。では一体どのような状態が公平なのでしょうか。正義をめぐる議論もこの公平性を巡って多くの議論が行われてきました。
倫理学と学会
日本倫理学会:http://jse.trustyweb.jp/
日本臨床倫理学会:http://square.umin.ac.jp/j-ethics/
日本生命倫理学会:https://ja-bioethics.jp/
おすすめ本・関連書籍・専門書
読みやすい!楽しい!系
- 赤林朗・児玉聡『入門・倫理学』勁草書房
- 佐藤岳詩『メタ倫理入門』勁草書房
- 品川哲彦『倫理学入門』中公新書
- 平尾昌宏『ふだんづかいの倫理学』晶文社
- 山内志朗『小さな倫理学入門』慶應義塾大学出版会
ちょっと難しいかも
概説
- 加藤尚武『現代倫理学入門』、講談社、1997
- 有福孝岳編『エチカとは何か――現代倫理学入門』、ナカニシヤ出版、1999
- 新田孝彦『入門講義 倫理学の視座』、世界思想社、2000
- S・ブラックバーン『ビーイング・グッド――倫理学入門』、坂本知宏/村上毅訳、晃洋書房、2003
- 小松光彦/樽井正義/谷寿美編『倫理学案内――理論と課題』、慶應義塾大学出版会、2006
- 大庭健『善と悪――倫理学への招待』、岩波書店、2006
- 伊勢田哲治『動物からの倫理学入門』、名古屋大学出版会、2008
- 柘植尚則『プレップ倫理学』、弘文堂、2010
- 永井均『倫理とは何か――猫のアインジヒトの挑戦』、筑摩書房、2011
- 田中朋弘『文脈としての規範倫理学』、ナカニシヤ出版、2012
- P・シンガー『私たちはどういきるべきか』、山内友三郎監訳、筑摩書房、2013
- 品川哲彦『倫理学の話』、ナカニシヤ出版、2015
- J・レイチェルズ/S・レイチェルズ『現実をみつめる道徳哲学(新版)』、次田憲和訳、晃洋書房、2017
歴史
- A・マッキンタイヤー『西洋倫理学史』、深谷昭三訳、以文社、1986
- 小熊勢記/川島秀一/深谷昭三『西洋倫理思想の形成』(I・II)、晃洋書房、1985
- R・ノーマン『道徳の哲学者たち――倫理学入門』、塚崎智/石崎嘉彦/樫則章監訳、ナカニシヤ出版、2001
- J・ロールズ『哲学史講義』(上・下)、坂部恵ほか訳、みすず書房、2005
- J・B・シュナイウィンド『自律の創成――近代道徳哲学史』、法政大学出版局、2011
- 柘植尚則編『入門・倫理学の歴史――24人の思想家』、梓出版社、2016
シリーズ
- 佐藤康邦ほか編『叢書 倫理学のフロンティア』(全18巻)、ナカニシヤ出版、1998‐2006
- 加藤尚武/立花隆監修『現代社会の倫理を考える』(全17巻)、丸善、2002‐09
- 越智貢ほか編『岩波 応用倫理学講義』(全7巻)、岩波書店、2004‐05
- 石崎嘉彦/山内廣隆ほか編『人間論の21世紀的課題』(全9巻)、ナカニシヤ出版、2007‐08
- 直江清隆/越智貢編『高校倫理からの哲学』(全4巻・別巻)、岩波書店、2012
- 内山勝利/小林道夫/中川純男/松永澄夫編『哲学の歴史』(全12巻・別巻)、中央公論新社、2007‐08
- 今村仁司/三島憲一/野家啓一/鷲田清一編『現代思想の冒険者たち』(全31巻)、講談社、1996‐98
事典
- 星野勉/三嶋輝夫/関根清三編『倫理思想辞典』、山川出版社、1997
- 廣松渉ほか編『岩波 哲学・思想事典』、岩波書店、1998
- 大庭健ほか編『現代倫理学事典』、弘文堂、2006
- 加藤尚武ほか編『応用倫理学事典』、丸善、2008
- J・バッジーニ/P・フォスル『倫理学の道具箱』、長滝祥司/廣瀬覚訳、共立出版、2012
- F・P・ウィーナー編『西洋思想大事典』(全5巻)、平凡社、1990
- 小林道夫ほか編『フランス哲学・思想事典』、弘文堂、1999
- 日本イギリス哲学会編『イギリス哲学・思想事典』、研究社、2007
- 木田元ほか編『コンサイス20世紀思想事典(第2版)』、三省堂、1997
- 生命倫理百科事典翻訳刊行委員会編『生命倫理百科事典』(全5巻)、丸善出版、2007
一次文献〜さらに深く〜
- プラトン『餐宴』、久保勉訳、岩波文庫、2008
- プラトン『ソクラテスの弁明』、納富信留訳、光文社古典新訳文庫、2013
- プラトン『ゴルギアス』、加来彰俊訳、岩波文庫、1967
- プラトン『パイドン』、岩田靖夫訳、岩波文庫、1998
- プラトン『国家』、藤沢令夫訳、岩波文庫、1979
- アリストテレス『ニコマコス倫理学』、高田三郎訳、岩波文庫、1971
- マルクス・アウレーリウス『自省録』、神谷美恵子訳、岩波文庫、1956
- キケロー『義務について』、泉井久之助訳、岩波文庫、1961
- エピクテートス『人生談義』、鹿野治助訳、岩波文庫、1958
- アウグスチヌス『告白』、山田晶訳、中公文庫、2014
- トマス・アクィナス『神学大全』、高田三郎ほか訳、創文社、1960-2012
- デカルト『情念論』、谷川多佳子訳、岩波文庫、2008
- パスカル『パンセ』、塩川徹也訳、岩波文庫、2015
- スピノザ『エチカ』、畠中尚志訳、岩波文庫、1951
- スピノザ『神学・政治論』、吉田量彦訳、光文社古典新訳文庫、2014
- ホッブズ『リヴァイアサン』、水田洋訳、岩波文庫、1992
- ロック『統治二論』、加藤節訳、岩波文庫、2010
- ヒューム『人間本性論』、木曾/石川/中釜/伊勢訳、法政大学出版局、1995-2012
- スミス『道徳感情論』、水田洋訳、岩波文庫、2003
- ベンサム『道徳および立法の諸原理序説』、山下重一訳、『世界の名著38 ベンサム J.S.ミル』所収、中央公論社、1968
- ミル『功利主義』、川名/山本訳、『J.S.ミル 功利主義論集』所収、京都大学学術出版会、2010
- ミル『自由論』、斉藤悦則訳、光文社古典新訳文庫、2012
- ルソー『エミール』、今野一雄訳、岩波文庫、1962-64
- ルソー『人間不平等起源論』、本田/平岡訳、岩波文庫、972
- ルソー『社会契約論』、桑原/前川訳、岩波文庫、1954
- カント『道徳形而上学の基礎づけ』、宇都宮芳明訳、以文社、1989
- カント『永遠平和のために』、宇都宮芳明訳、岩波文庫、1985
- カント『啓蒙とは何か』、篠田英雄訳、『啓蒙とは何か、他四編』所収、岩波文庫、1974
- フィヒテ『知識学への第二序論』(『フィヒテ全集』第7巻)、鈴木琢真訳、晢書房、2004
- シェリング『人間的自由の本質』、西谷啓治訳、岩波文庫、1951
- ヘーゲル『精神現象学』、樫山欽四郎訳、平凡社ライブラリー、1997
- ヘーゲル『法哲学』、藤野/赤沢訳、中公クラシックス、2001
- ヘーゲル『歴史哲学講義』、長谷川宏訳、岩波文庫、1994
- マルクス『経済学・哲学草稿』、城塚/田中訳、岩波文庫、1964
- キルケゴール『死に至る病』、桝田啓之郎訳、『死にいたる病・現代の批判』所収、中公クラシックス、2003
- キルケゴール『反復』、桝田啓三郎訳、岩波文庫、1983
- ニーチェ『道徳の起源』、木場深定訳、岩波文庫、1964
- ニーチェ『善悪の彼岸』、木場深定訳、岩波文庫、1970
- ベルクソン『道徳と宗教の二つの源泉』、合田/小野訳、ちくま学芸文庫、2015
- ハイデガー『存在と時間』、細谷貞雄訳、ちくま学芸文庫、1994
- シェーラー『宇宙における人間の地位』、亀井裕/山本達訳、白水社、2012
- ヤスパース『われわれの戦争責任について』、橋本文夫訳、筑摩書房、2015
- サルトル『実存主義とは何か』、伊吹武彦訳、人文書院、1996
- フランクル『夜と霧』、池田香代子訳、みすず書房、2002
- フロム『自由からの逃走』、日高六郎訳、東京創元社、1952
- ムア『倫理学原理』、泉谷/寺中/星野訳、三和書籍、2010
- ヘア『道徳の言語』、小泉/大久保訳、勁草書房、1982
- ヘア『道徳的に考えること』、内井/山内監訳、勁草書房、1994
- パーフィット『理由と人格』、森村進訳、勁草書房、1998
- フーコー『監獄の誕生――監視と処罰』、田村俶訳、新潮社、1977
- レヴィナス『全体性と無限』、熊野純彦訳、岩波文庫、2005-06
- レヴィナス『存在の彼方へ』、合田正人訳、講談社学術文庫、1999
- ロールズ『正義論』、川本/福間/神島訳、紀伊國屋書店、2010
- アーレント『人間の条件』、志水速雄訳、ちくま学芸文庫、1994
二次文献
- J・O・アームソン『アリストテレス倫理学入門』、雨宮健訳、岩波現代文庫、2004
- 中川純男編『神との対話』(『哲学の歴史』第3巻)、中央公論新社、2008
- J・バルベラック『道徳哲学史』、門亜樹子訳、京都大学学術出版会、2017
- 坂部恵『ヨーロッパ精神史入門』、岩波書店、1997
- E・カッシラー『啓蒙主義の哲学』、中野好之訳、ちくま学芸文庫、2003
- A・O・ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』、内藤健二訳、ちくま学芸文庫、2013
- 竹田篤司『近代フランス哲学講義』、論創社、1999
- J・H・ブラムフィット『フランス啓蒙思想入門』、清水幾太郎訳、白水社、2004
- 森岡邦泰『深層のフランス啓蒙思想――ケネー、ディドロ、ドルバック、ラ・メトリ、コンドルセ(増補版)』、晃洋書房、2003
- F・ラヴェッソン『十九世紀フランス哲学』、杉山直樹/村松正隆訳、知泉書館、2017
- 久米博『現代フランス哲学』、新曜社、1998
- 岡本裕一朗『フランス現代思想史――構造主義からデリダ以後へ』、中央公論新社、2015
- P・トロティニョン『現代フランスの哲学――実存主義・現象学・構造主義』、田島節夫訳、白水社文庫クセジュ、1969
- K・A. リーダー『フランス現代思想――一九六八年以降』、本橋哲也訳、講談社選書メチエ、1994
- B・ヴァルデンフェルス『フランスの現象学』、佐藤真理人監訳、法政大学出版局、2009
- 廣松渉・坂部恵・加藤尚武編『講座 ドイツ観念論』、弘文堂、1990
- 村岡晋一『ドイツ観念論――カント・フィヒテ・シェリング・ヘーゲル』、講談社選書メチエ、2012
- 大橋良助編『ドイツ観念論を学ぶ人のために』、世界思想社、2005
- K・レーヴィット『ヘーゲルからニーチェへ――十九世紀思想における革命的断絶』(上・下)、三島憲一、岩波文庫、2015
- 佐藤康邦/湯浅弘『ドイツ哲学の系譜』、放送大学教育振興会、2014
- H・シュネーデルバッハ『ドイツ哲学史1831‐1933』、朴順南/舟山俊明/内藤貴/渡邊福太郎訳、法政大学出版局、2009
- R・J・バーンスタイン『根源悪の系譜――カントからアーレントまで』、阿部ふく子ほか訳、法政大学出版局、2013
- 鎌井敏和・泉谷周三郎・寺中平治編『イギリス思想の流れ』、北樹出版、1998
- 寺中平治・大久保正健編『イギリス哲学の基本問題』、研究社、2005
- 日本倫理学会編『イギリス道徳哲学の諸問題と展開』、慶應通信、1991
- 柘植尚則『イギリスのモラリストたち』、研究社、2009
- 児玉聡『功利と直観――英米倫理思想史入門』、勁草書房、2010
- B・ウィリー『イギリス精神の源流――モラリストの系譜』、創元社、1980
- B・ウィリー『十八世紀の自然思想』、みすず書房、1975
- L・スティーブン『十八世紀イギリス思想史』(全3巻)、筑摩書房、1969-70
- B・ウィリー『十九世紀イギリス思想』、みすず書房、1985
Loohcsアカデミー
ラジオの文字起こし:https://loohcs.co.jp/l-aka/ethics/eth-ji/eth1/
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